日本ヘリコバクター学会 胃癌リスク評価に資する抗体法適正化委員会からの勧告
「Latex法における胃癌リスク評価に資する最適な血清抗ヘリコバクター・ピロリ抗体価測定基準値」について
日本ヘリコバクター学会
理事長 加藤 元嗣
胃癌リスク評価に資する抗体法適正化委員会
委員長 伊藤 公訓
日本ヘリコバクター学会は、「Latex法における胃癌リスク評価に資する最適な血清抗ヘリコバクター・ピロリ抗体価測定基準値」を提示することを目的として、学会主導多施設研究を実施した。その結果は以下のごとくであり、胃癌リスク評価を行う際には以下を留意して実施するよう勧告する。
1) Eiken Latex kit(LZテスト‘栄研’H. ピロリ抗体)は、Eiken EIA kit(Eプレート‘栄研’H. ピロリ抗体Ⅱ)に比較して
- ピロリ未感染例で3 U/mL以上になりやすい。
(Eiken Latex 20% (321/1,587) vs Eiken EIA 7.4% (117/1,587))(注1) - ピロリ未感染例でも10 U/mL以上になることがある。
(Eiken Latex 2.2% (35/1,587) vs Eiken EIA 0.25% (4/1,587))(注2)
2) 本邦で使用できるLatex kit 3種間の相違について
- Wako Latex kit(LタイプワコーH. ピロリ抗体・J), Denka Latex kit(H. ピロリ-ラテックス「生研」)では、添付文書のカットオフ値を用いることでピロリ未感染例と感染例(現感染および既感染)の最適診断精度が得られる。
- Eiken Latex kitでは添付文書のカットオフ値が最適ではない。ROC解析による最適のカットオフ値を用いれば、3種のLatex kitの診断精度に差はないと考えられるが、再検証が必要である。(注3)
注1:Eiken EIAを用いた胃がんリスク層別化検査では3 U/mL以上が精査対象のため、Eiken EIAの代わりにEiken Latexを用いると精査例(偽陽性)が増加する。
注2:抗体価が陽性であっても画像と整合性が取れない場合には、抗体価のみで現感染と判断してはならない。
注3:除菌歴のない既感染者が一定頻度存在する(腸上皮化生による自然消失例や、他目的抗菌薬使用による偶然除菌例)。実臨床では、問診で除外できない既感染者が存在し、その混入率により最適のカットオフ値は変動する。なお、今回実施した本学会主導多施設研究において算出された最適カットオフ値は、Wako 4.4、Denka 10.8、Eiken 6.1であった。
過去の委員会からの勧告
- 2017年7月28日付
日本ヘリコバクター学会「胃がんリスク評価に資する抗体法適正化委員会」からの勧告