日本ヘリコバクター学会「胃がんリスク評価に資する抗体法適正化委員会」からの勧告
日本ヘリコバクター学会
理事長 杉山敏郎
胃癌リスク評価に資する抗体法適正化委員会
委員長 河合 隆
副委員長 伊藤公訓
胃がんリスク評価に血清抗体検査を用いる場合、現行の感染診断のために設定された既存のカットオフ値をそのまま適用することはできない。複数の抗体測定キットの各々の特性が異なるため、各キットの特性を評価して、本目的に資する最も適切な抗体価を設定し直す必要がある。以下は汎用されている「Eプレート栄研H.ピロリ抗体Ⅱ」を使用する場合の運用案である。
- 抗体価3 U/mL未満のみで、胃がん低リスク(ピロリ菌未感染)と断定できない。特に高齢者では加齢に伴う抗体価の低下、除菌後例の混入が避けられず、他の感染診断法、画像所見を併用して判断することが望ましい。画像所見を加味してピロリ菌未感染と判断された場合には、ほぼ胃がん低リスクと判断できる。
- 抗体価が3 U/mL以上の陰性値(いわゆる陰性高値)の場合、ピロリ菌感染例、除菌後例が高率に混在しているため、胃がん低リスクとして扱わない。適切なピロリ菌感染診断法を追加し、陽性の場合は除菌する。
- 胃がんリスク層別化診断は原則として「除菌治療前」に適応すべきである。除菌歴のある方は、他の除菌後胃がんリスクを評価できる方法を参考に対応する。