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ピロリ菌に関するQ&A

ピロリ菌ってどんな菌ですか?
1・ピロリ菌は、正式にはヘリコバクター・ピロリという細菌で胃の中に生息しています。
・アルカリ性のアンモニアを作り、強い酸性の胃でも生きられます。
・多くの研究により、ピロリ菌が慢性胃炎、胃・十二指腸、胃がんなどの原因になっていることがわかっています。
・1983年はじめてピロリ菌の培養に成功したウォーレンとマーシャルは、のちにノーベル賞を授与されました。
ピロリ菌はどのように感染するのですか?
2・ピロリ菌は口から感染します。
・とくにピロリ菌に感染しやすいのは乳幼児期と考えられています。
・ピロリ菌はヒトーヒトで経口感染しますが、環境因子や家庭内感染など他にいくつかの感染経路も考えられます。
・親世代の感染率が低くなり、衛生環境も良くなっているため、子どもの感染率は非常に低くなっています。
・成人になってからの感染はまれです。
ピロリ菌はどのくらいの人が感染しているのですか?
3・日本でピロリ菌に感染している人は少なくとも3,000万人以上といわれています。
特に50歳以上の人で感染している割合が高いとされています。
・しかし衛生環境が整ったことによってピロリ菌に感染している割合は年々減少しており、若い世代では低くなっています。今後は、ピロリ菌に感染している人はますます減っていくと予想されています。
ピロリ菌は除菌した方がいいですか?
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わずか1週間の簡単な除菌治療のみで、ピロリ菌による病気を予防し、治癒することがわかっています。

ピロリ菌による病気の予防
・胃がん⇒発生、再発が半数~3分の1に減少
・胃潰瘍・十二指腸潰瘍⇒再発をほぼ抑制

ピロリ菌による病気の治癒
・胃マルトリンパ腫⇒60%~80%で治癒
・胃過形成性ポリープ⇒約70%で縮小、消失
・特発性血小板減少性紫斑病⇒約半数で血小板が上昇
・機能性ディスペプシア⇒一部で上腹部症状が改善

感染経路の抑制
・次世代へのピロリ菌感染を予防

ピロリ菌の除菌は、
①多くの方が大きな恩恵を受けます。
②次世代への感染を予防します。
その結果、胃がん撲滅や医療費削減に寄与します。

ピロリ菌は胃・十二指腸潰瘍と関係あるのですね
5胃潰瘍や十二指腸潰瘍の主な原因はピロリ菌感染と薬剤(解熱剤・鎮痛剤、アスピリンなど)が原因です。
ピロリ菌がいると、潰瘍が治っても1年後には多くの患者さんが再発しています。
ピロリ菌を除菌すると、ピロリ菌が原因の潰瘍の再発はほとんどなくなりますので、除菌治療を行うべきです。但し、薬剤による潰瘍は除菌しても発生することがあり、治療が必要です。
ピロリ菌を除菌すると胃がんの予防になるのですか?
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早期胃がんに対して内視鏡治療を受けた患者さんにピロリ菌を除菌することにより、別の部位にできる新しい胃がんの発生率が3分の1に減少しました。

注意点
但し、除菌によって完全に胃がんは抑制できません。除菌が成功したあとでも、胃がんが発見されることがありますので、定期的に胃の内視鏡検査や胃がん検診を受けるようにしてください。

胃MALT(マルト)リンパ腫とはどんな病気ですか?
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胃マルトリンパ腫は、胃の粘膜にあるリンパ組織(MALT)から発生する、ゆっくりと発育する悪性度の低い腫瘍です。
胃マルトリンパ腫の多くはピロリ菌感染による慢性胃炎から発症します。
ピロリ菌陽性胃マルトリンパ腫は、ピロリ菌除菌によって60%~80%で治癒するため、除菌治療が第一選択の治療法です。

特発性血小板減少性紫斑病(免疫性血小板減少症)とはどのような病気ですか?
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特発性血小板減少性紫斑病(免疫性血小板減少症)とは、明らかな基礎疾患や原因薬剤の関与なく血小板が減少し、種々の出血症状を起こす病気です。

ピロリ菌に感染している慢性特発性血小板減少性紫斑病の患者さんの約半数以上は、ピロリ菌の除菌により、血小板が増加することがわかっています。
このうち除菌療法は、原則として18歳以上の患者さんが対象となります。

わが国における特発性血小板減少性紫斑病に対するピロリ菌除菌効果に関する論文です(100例以上を検討した論文)。

ピロリ菌の検査・治療が保険診療でできるのはどのような場合ですか?
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ピロリ菌感染胃炎
2013年2月から、内視鏡検査で「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」と診断された人は、保険を使ってピロリ菌の検査・治療を受けることができるようになりました。
ピロリ菌が感染することにより生じる胃炎で、通常、自覚症状はありません。ピロリ菌に感染していると胃がんになりやすいことがわかっています。
除菌により胃炎の進行を予防し、胃がんの発生を抑制することができます。

ピロリ菌の検査はどのようにするのですか?
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(1) 血液または尿中抗体検査
体の中にピロリ菌に対する抗体があるかどうかを調べる検査法です。簡便なので広く用いられますが、除菌が成功した後でも陽性が続くこともあり注意が必要です。

(2) 尿素呼気試験
診断薬を服用する前後の呼気を集めてピロリ菌の有無を調べます。最も精度の高い検査法で、除菌前の感染診断と除菌療法後の除菌判定に推奨されています。

(3) 便中抗原検査
糞便中のピロリ菌を調べる精度の高い検査法で、現在ピロリ菌に感染しているかどうかわかるので、ピロリ菌の感染診断と除菌判定に有用です。

(4) 内視鏡検査で胃の粘膜を採取して診断する方法
(a)組織検体中のピロリ菌を顕微鏡で観察する鏡検法、(b)粘膜を特殊な液と反応させて色の変化で判定する迅速ウレアーゼ法、(c)粘膜に付着したピロリ菌を培養し確認する培養法があります。

注意点
どの検査も100%正しいとは限りません。検査の選択や結果の解釈については、医師にお尋ねください。

除菌治療はどのように行うのですか?
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通常は3種類の薬を朝夕2回、7日間服用します。これを一次除菌といいます。
一次除菌は、胃酸の分泌をおさえる胃薬(プロトンポンプ阻害薬、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー)と2種類の抗生物質(アモキシシリンとクラリスロマイシン)を用います。除菌薬内服終了後、4週間以上あけて除菌の判定を行います。具体的には、尿素呼気試験や便中抗原検査を用いてもう一度ピロリ菌を調べます。約70%~90%の方は除菌に成功します。

注意点
薬の飲み間違い、飲み忘れ、自己判断などで薬を減らすと、除菌に失敗する率が増え、しかも抗生物質が効かない耐性菌を作ってしまう可能性があります。
薬のアレルギー、とくにペニシリンアレルギーといわれたことのある方は、薬を飲み始める前に必ず医師に相談してください。
他に服用中の薬がある場合も除菌の薬が影響することがありますので、必ず医師にお知らせください。
除菌の判定は非常に大切ですので、必ず受けてください。

除菌に失敗したら?
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1. 一次除菌に失敗したら
一次除菌に失敗した場合、もう一度除菌治療を行うことを二次除菌といいます。二次除菌は、一次除菌と同じように、3種類の薬を朝夕2回、7日間服用します。失敗の原因は耐性菌であることが多いので、一次除菌で使用した抗生物質を別の抗生物質に変更します。二次除菌では、約80~90%の方は除菌に成功します。お薬を服用する期間アルコールは飲めません。

2. 二次除菌に失敗したら
ピロリ菌の専門家に紹介してもらってください。詳しくはQの「保険によらないピロリ菌の検査や除菌治療」を参照ください。

除菌治療の副作用はどのようなものがありますか?
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除菌治療の主な副作用は以下のものが報告されています。
いずれの副作用も一時的なものと考えられています。

1. 下痢・軟便
頻度として最も多く、約10~30%の方に起こります。1日2,3回の下痢・軟便であれば、薬の量を減らしたり中止したりせず、最後まで薬を飲んでください。ただし、発熱や腹痛をともなうひどい下痢の場合や便に血がまじる場合は、薬を飲むのを中止して、すぐに医師に相談してください。

2. 味覚異常
食べ物の味がおかしく、苦味や金属のような味がすることが5~15%の方に起こります。

3. 皮膚の異常
皮膚にじんま疹や発疹などの異常が現れることがあります。

注意点
2~5%の頻度で、ひどい下痢、便に血がまじる、ひどい皮膚の異常、アレルギー反応などが起こることがあります。このような場合は、薬の内服を中止して、すぐに医師に相談してください。

除菌後に胃の内視鏡検査は必要ですか?
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除菌が成功した後でも、胃がんが発見されることがあります。定期的に胃の内視鏡検査を受けるようにしてください。
ピロリ菌の除菌により、胃がんが発生するリスクは低くなりますが、ゼロにはなりません。胃がんで亡くなる方は減少傾向にありますが、除菌に成功した後でも、胃がんを早期発見するために内視鏡検査を受けましょう。

除菌治療の後に生じる問題はありますか?
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除菌が成功した後で、胃の酸が食道に逆流して、胸焼けなどの症状が起こることがあります。これを逆流性食道炎といいますが、一時的なものが多く、重篤な症状になることはまれです。

注意点
除菌が成功した後でも、胃がんが発見されることがありますので、定期的に胃の内視鏡検査や胃がん検診を受けるようにしてください。

保険によらないピロリ菌の検査や除菌治療は可能ですか?
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2回目の除菌に失敗した場合など、保険診療で検査や除菌治療ができない場合は、自費診療、あるいは臨床研究に参加することにより検査や治療は可能です。

日本ヘリコバクター学会では除菌療法に対する市民の方の理解を深め、不安を解消するために、ピロリ菌感染症認定医制度を創設して、ホームぺージ(ヘリコバクター学会認定医一覧)に認定医の氏名、勤務先を地域別に掲載しています。

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