市民の皆さまへ

理事長挨拶

日本ヘリコバクター学会理事長
大分大学医学部消化器内科学講座教授
村上和成

村上和成理事長

ヘリコバクターピロリ(ピロリ菌)が発見されて約40年になります。ピロリ菌が胃がんの最大の原因になることが分かり、上部消化管疾患の診断や治療は大きく変化しました。日本ヘリコバクター学会はピロリ菌発見後の1995年に発足した第一回日本ヘリコバクター研究会から始まります。1998年には研究会から学会に移行し現在に至っており、やがて30周年を迎えることになります。

本学会の会員数は約3000名です。ピロリ菌の現感染者は減少していますが、除菌後症例は増加し、除菌後も胃がんが見つかり、従来の胃がんとは見た目が少々異なることが分かっています。除菌後に胃がんで亡くなることは絶対に避けなければなりません。さらに、若年者のピロリ菌陽性率は約5%と低率ですが、日本のピロリ菌の陽性者はいまだ2000万人から3000万人いるとされています。胃がん撲滅のためには小児の除菌が重要な課題です。世界に目を向けると、東南アジア、中国、インドなど、まだまだ現感染率が70-80%と高く、人口も多い国々はたくさんあります。将来的には、これらの国との共同事業や学会を通じた共同研究が重要と考えます。感染の現状把握から、除菌率や耐性菌や菌株の研究など、本学会は指導的立場をとれると思います。

ピロリ菌は胃だけでなく、血液疾患・循環器疾患・代謝内分泌疾患などにも影響があり、全身に対する感染症です。また、ピロリ菌以外にもヘリコバクター属が約30種類存在しており、ペットなどを介して一部の菌は人の胃に感染することもわかってきました。さらに、ピロリ菌未感染胃がんや自己免疫性胃炎など、最近注目されている疾患も当学会で議論される分野です。今後とも引き続き日本ヘリコバクター学会は、ヘリコバクター感染症にかかわる多くの疾患に関する臨床・研究に貢献し、鋭意努力を重ねて行きたいと考えております。今後ともよろしくお願い申し上げます。

日本ヘリコバクター学会とは

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